高齢者のネグレクトとは?セルフネグレクトとの違いから対応まで解説

実家の親御さんが片づけをしなくなり、入浴も受診も嫌がる姿を見て、ネグレクトではないかと不安になっていませんか?周囲から「このままだと危ない」と声をかけられ、どうすればよいのか迷っている方も少なくありません。
高齢者のネグレクトは、高齢者虐待防止法が定める5つの虐待の一つで、必要な介護や世話が放棄された状態です。この記事では、法律の対象から外れるセルフネグレクトとの違いや、どこからがネグレクトになるのかの線引きを解説します。施設で受ける場合の兆候、相談窓口と通報後の流れまで取り上げます。
この記事を読めば、親御さんの状況がどちらのネグレクトかを判別でき、親御さんの状態とご自身の介護を落ち着いて確かめられるようになるでしょう。
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
高齢者のネグレクトとは
高齢者のネグレクトは、必要な介護や世話を放棄し、高齢者の心身の状態を悪化させる行為です。高齢者虐待防止法が定める5つの虐待の一つで、家庭で介護するご家族が起こす場合も、施設の職員が起こす場合もあります。故意によるものか、そうでないかは区別されません。
ここでは、ネグレクトが虐待全体のどこに位置づけられるのか、法律がどこまでを範囲としているのかを整理します。
高齢者虐待5類型での位置づけ
高齢者虐待防止法は、高齢者への虐待を5つの型に分けています。ネグレクトは、そのうちの「介護・世話の放棄・放任」にあたります。
法律が定める5つの型は、次のとおりです。
- 身体的虐待
- 介護・世話の放棄・放任
- 心理的虐待
- 性的虐待
- 経済的虐待
このうちネグレクトは、条文には出てこない通称です。国の資料では「介護・世話の放棄・放任」、全国調査の集計では「介護等放棄」と表記されます。
厚生労働省の令和6年度調査では、家族や親族などの養護者による虐待が17,133件と判断されました。被害を受けた高齢者17,472人のうち、介護等放棄にあたる被害を受けた人は19.7%です。暴力のように目に見える形をとらないぶん、周囲が気づきにくい型だといえます。
関連記事:高齢者虐待の原因とは?介護のストレスを減らす対策と相談窓口を解説
法律が定めるネグレクトの範囲
法律は、ネグレクトを「高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置」や「養護を著しく怠ること」と定めています。対象になるのは65歳以上の高齢者です。
判断するときに、故意かどうかは問われません。介護に追われた結果として世話が行き届かなくなった場合でも、高齢者の生活環境や心身の状態が悪化していれば、放棄・放任として扱われます。
対象になる場所は家庭だけではありません。現に世話をしている家族・親族・同居人などは養護者、老人ホームやデイサービスで働く職員は養介護施設従事者等と呼ばれ、それぞれ別の条文で定義されています。
高齢者のセルフネグレクトとの違い
「ネグレクト」で検索すると、ほかの人による放棄を扱う記事と、高齢者が自らの世話をやめてしまうセルフネグレクトを扱う記事が混ざって出てきます。この2つは、法律の扱いも支援に入るきっかけも別です。
ここでは、セルフネグレクトがどのような状態を指すのか、親御さんに現れるサイン、法律の対象になるかどうかの差を解説します。
ご本人が身の回りの世話をやめる状態
セルフネグレクトは、ご本人が食事や入浴・受診など生活に必要な行為をしなくなり、心身の安全や健康が損なわれていく状態です。周囲に放置している人がいるわけではなく、生活が内側から崩れていく点が異なります。
きっかけは一つではありません。配偶者との死別や病気、判断力の低下や経済的な行きづまり、孤立などが重なると、生活を立て直す力が働かなくなります。
必要な医療や介護保険サービスの利用を拒み、不衛生な住まいで暮らし続けている状態は、客観的に見ればご本人の権利が侵害されている状態です。ご本人に困った自覚がないまま進むため、気づいたときには生活がかなり崩れている場合もあります。
まずは「放置されている」のか「自ら手放している」のかを見分けると、相談のときに状況を伝えやすくなります。
関連記事:もしかしてセルフネグレクト?独居高齢者の孤立を防ぐ原因と対策、相談窓口を解説
一人暮らしの親に出るサイン
離れて暮らす親御さんのセルフネグレクトは、家の様子やご本人の様子として現れます。久しぶりに実家を訪ねたときの違和感が、最初の手がかりです。
自治体のチェックリストが自己放棄のサインに挙げる項目は、次のとおりです。
- 昼間でも雨戸が閉まったまま
- 電気やガスが止められている
- 郵便物や新聞がたまっている
- 室内にゴミがあふれ異臭がする
- 入浴した様子がなく衣類が汚れている
こうした変化は、認知症の初期にも同じように現れます。片づけができなくなった、身だしなみに構わなくなったといった変化から認知症に気づく場合もあるため、セルフネグレクトと決めつけずに受診や相談へつなげましょう。
サインは一つだけでは判断できません。複数が重なり、しかも前に会ったときより悪くなっているなら、早めに窓口へ相談する段階です。
関連記事:高齢者の一人暮らしは危険?潜むトラブルと家族ができる7つの対策を解説
法律の対象になるかどうかの差
2つを分ける最も大きな差は、高齢者虐待防止法の対象になるかどうかです。ほかの人によるネグレクトは法律が定める虐待にあたりますが、セルフネグレクトは虐待行為をする人がいないため、法律の対象外です。
ただし、対象外でも支援は受けられます。自治体は相談支援や権利擁護の一環としてセルフネグレクトに対応し、必要があれば施設への入所措置や成年後見制度の申立てまで踏み込みます。
つまり、どちらであっても相談先は同じです。地域包括支援センターや自治体の窓口に、見たままの状況を伝えれば、そこから先の判断は職員が引き受けます。
高齢者へのネグレクトにあたる行為
どこまでが行き届かない介護で、どこからがネグレクトになるのでしょうか。線を引くには、法律が想定している行為を先に知っておくと考えやすくなります。
ここでは、放棄・放任にあたる代表的な行為を、食事と水分、清潔と医療の2つに分けて見ていきます。
食事や水分を与えない
放棄・放任の中心にあるのが、食事と水分です。必要な量を与えず、空腹の状態が長く続いたり脱水や栄養失調に至ったりしている状態は、ネグレクトにあたる行為です。
高齢者は、のどの渇きを感じにくくなり、食べる量も自然に減っていきます。用意した食事に手をつけていない状態を見過ごすと、体重が落ち、体力も急に低下します。
目安になるのは、用意されているかどうかよりも、実際に食べて飲めているかどうかです。皿が残ったまま、水分をとった様子がない、体重が短期間で減ったといった変化が続くなら、介護の体制を見直す段階です。
食事の支度が難しいときは、配食サービスや訪問介護で補えます。ただし、配食サービスを一人暮らしの世帯に限る地域もあり、同居家族の生活援助はケアマネジャーの見立て次第です。
入浴や通院をさせない
清潔と医療も、放棄・放任の判断で重く見られます。入浴させずに不潔なままにする、おむつを交換しない、汚れた衣類や寝具をそのままにする状態が続けば、ネグレクトにあたります。
医療から遠ざけるのも同じです。病気の兆候があるのに診察を受けさせない、処方どおりに薬を飲ませない、必要な介護保険サービスを相応の理由なく使わせないといった対応も含まれます。
冷暖房を使わずに極端な暑さや寒さの中で過ごさせる、室内にゴミを放置して住まいの環境を悪化させる状態も、同じ枠に入ります。
親御さんが入浴や受診を強く嫌がる場面もあるでしょう。拒まれたまま放置せず、ケアマネジャーや自治体の窓口へ状況を伝えておきましょう。
高齢者への介護がネグレクトになる基準
仕事や家事に追われ、食事や着替えの世話を後回しにした日があると、ご自身の介護がネグレクトではないかと不安になるものです。ただ、疲れて手が回らなかった日があるだけで虐待と判断されるわけではありません。
ここでは、一時的な手抜きと継続的な放置を分ける考え方と、ご自身の介護を振り返るための点検項目を紹介します。
一時的な手抜きと継続的な放置の差
虐待にあたるかどうかを決めるのは、介護する側の意図ではありません。高齢者の権利が侵害されていると客観的に確認できるかどうかで判断され、ご本人や介護する側に自覚があるかは問われません。
そのうえで深刻さを測る物差しは、被害の程度です。生命や心身、経済面にどれだけ影響が出ているかが土台になり、頻度と期間を加えて総合的に判断されます。
一度の寝坊で朝食が遅れた日と、何日も食事が用意されず体重が落ちている状態とでは、意味がまったく異なります。前者は手が回らなかった日で、後者は生活そのものが崩れている状態です。
判断そのものは自治体が担うため、ご家族だけで白黒をつける必要はありません。
介護を振り返る点検項目
不安なときは、親御さんの様子とご自身の関わり方を、項目に分けて確かめると整理できます。虐待の早期発見のために自治体が公表しているチェックリストは、自己点検にも役立ちます。
確かめたい項目は、次のとおりです。
- 汚れた衣類のままの日が続く
- 食事や水分がとれていない
- 受診や介護サービスが止まっている
- 部屋に食べ残しや衣類が散乱している
- 世話を頼まれると強い拒否感が出る
当てはまる項目があっても、その場で虐待と判断されるとは限りません。大事なのは、いくつ当てはまるかよりも、その状態が続いているかどうかです。
最後の項目は、介護する側に現れるサインです。世話に拒否的な言葉が出る、親御さんを人に会わせたくない、疲れて余裕がないといった状態が重なっているなら、介護の体制そのものを見直す時期にきています。
高齢者のネグレクトが起きる原因
ネグレクトは、介護する側に悪意があって起きるとは限りません。多くは介護の負担が積み重なり、支える力が追いつかなくなった結果です。原因がわかると、防ぐための手立ても見えてきます。
ここでは、家庭で放棄・放任が起きる背景を、介護疲れと認知症への対応の2つから見ていきます。
介護疲れやストレスの蓄積
厚生労働省の令和6年度調査では、養護者による虐待の発生要因として、介護疲れ・介護ストレスが57.2%にのぼりました。半数を超える家庭で、介護する側の消耗が引き金になっています。
介護は終わりの見えない生活です。夜間の対応が続いて眠れない、ご自身の予定が組めない、相談できる相手がいないといった状態が重なると、心身の余裕は少しずつ削られていきます。
同じ調査では、虐待を受けた高齢者の85.7%が、虐待をした養護者と同居していました。逃げ場のない環境で介護を一人で背負うと、世話が後回しになる日が増え、やがてそれが日常になります。
疲れているご自身を責めても、状況は変わりません。負担を減らす手立てを早めに使うほうが、結果として親御さんの生活を守れます。
関連記事:「介護に疲れた」は限界のサイン?レスパイトケア(一時休息)でストレスを解消する方法
認知症の症状に対応しきれない負担
厚生労働省の調査で最も多かった発生要因は、高齢者側の認知症の症状で58.1%を占めました。介護疲れと並ぶのが、認知症への対応の難しさです。
認知症が進むと、同じ話が何度も繰り返され、伝えた内容が届かなくなります。入浴や着替えを強く拒まれる場面も増え、介護する側が「わざと困らせている」と感じてしまう日もあります。
対応の方法を知らないまま向き合い続けると、声かけがきつくなり、介護そのものがつらくなる場合もあるでしょう。つらさから距離を置く日が増えるほど、世話の放棄に近づいていきます。
認知症の対応は、慣れや気合いでどうにかなる話ではありません。ケアマネジャーや地域包括支援センターに現状を伝え、専門職の関わりを増やしましょう。
高齢者が施設で受けるネグレクトの兆候
ネグレクトが起きるのは家庭だけではありません。厚生労働省の令和6年度調査では、養介護施設従事者等による虐待が1,220件と判断され、相談・通報件数は4年連続で増えています。被害を受けた高齢者2,248人のうち、25.7%が介護等放棄にあたる被害を受けていました。
ここでは、面会に行ったご家族が気づける兆候を、2つの角度から解説します。
面会時に見える体や衣類の変化
施設でのネグレクトは、まずご本人の体と身なりに現れます。面会のときは、次の点を静かに確かめておきましょう。
- 頭髪や爪が伸びたままになっている
- 衣類や寝具が汚れている
- 体から強い臭いがする
- 皮膚や口の中が乾いている
- 体重が短期間で増減している
爪や頭髪は、日常のケアが届いているかがそのまま出る部分です。床ずれができている、おむつが濡れたまま放置されているといった状態も、放棄・放任として扱われます。
一度きりの様子で判断せず、前回の面会と比較してどう変わったかを見ましょう。気になる点はその場で職員に尋ね、日付とともに書き留めておくと、あとで相談するときの材料になります。
つじつまの合わないけがの説明
体のあざやけがに気づいたときは、説明の中身と傷の状態が噛み合っているかを確かめましょう。転んだと聞いたのにぶつけにくい場所にあざがある、尋ねるたびに経緯が変わるといった食い違いは、虐待を見つける手がかりになります。
面会そのものを断られる、ご本人からの伝言が届かない、外部との連絡が取りにくくなるといった変化も見逃せません。ケアの記録を見せてもらえない状態が続く場合も同じです。
不信感をぶつける前に、まずは事実を整理しましょう。いつ・どこで・誰が・何をしたのかを分けて書き出し、施設長や生活相談員へ落ち着いて伝えます。
説明を受けても状況が変わらないときの相談先は、自治体の窓口です。施設の職員による虐待は、家庭の場合とは別の窓口が担当する自治体もあります。
関連記事:老人ホーム入居後のトラブル事例と解決法|人間関係・金銭・事故の予防策と相談先
高齢者のネグレクトの相談窓口
ネグレクトを疑ったとき、ご家族だけで抱え込む必要はありません。高齢者虐待防止法は、虐待の防止と対応について市町村が第一義的な責任を負うと位置づけています。
ここでは、ご家族が最初に頼れる2つの窓口を紹介します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、介護保険法に基づいて自治体が設置する高齢者の総合相談窓口です。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーの3職種がチームで対応し、おおむね中学校区に1か所の割合で整備されています。
業務には権利擁護が含まれ、高齢者虐待の早期発見と防止も役割の一つです。ネグレクトの相談だけでなく、介護保険の使い方や成年後見制度、認知症への対応まで窓口を分けずに受けつけています。
相談は無料で、ご本人だけでなく支えるご家族や地域の住民も利用可能です。「虐待かどうかわからない」段階の相談でも問題はなく、生活の困りごととして話を聞いてもらえます。
関連記事:地域包括支援センターとは?役割や相談できる内容、利用方法をわかりやすく解説
自治体の高齢福祉担当課
自治体の高齢福祉担当課や介護保険課も、虐待の相談と通報の窓口です。虐待を受けたと思われる高齢者を見つけた人には通報の努力義務があり、生命や身体に重大な危険があるときは速やかな通報が義務づけられています。
窓口の名称と体制は、地域によってさまざまです。大阪市では、家族など養護者による虐待は各区役所の保健福祉センターが受けつけ、施設の職員による虐待は市の担当課が受けつけます。
休日や夜間のホットラインを設けている自治体もあります。急を要する事態が夜間に起きたときの連絡先は、平日の窓口とは別に確かめておきましょう。
お住まいの地域の窓口は、自治体のホームページか地域包括支援センターで確認できます。
通報後に高齢者の安全を確かめる流れ
通報したあとに何が起きるのかがわからないと、その一歩は踏み出しにくいものです。実際には、ご家族から親御さんを取り上げる手続きではなく、まず安全を確かめる作業から始まります。
ここでは、通報を受けた自治体がどう動くのかを、3つの段階に分けて見ていきます。
自治体が事実確認に動く
通報や相談を受けた自治体は、速やかに高齢者の安全確認と事実確認に入ります。担当者が一人で判断せず、地域包括支援センターなどと複数で情報を出し合い、虐待の有無と緊急性を見極めます。
確認の中心は、高齢者ご本人の状態です。訪問や面接で心身の様子を確かめ、ご本人の希望も聞き取ります。介護サービスを使っていれば、ケアマネジャーや事業所も情報源です。
事実確認が終わると、援助の方針を決める会議が速やかに開かれます。ここで、在宅の生活を支えながら見守るのか、いったん離す必要があるのかが検討されます。
通報が、そのまま親子を引き離す決定につながるとは限りません。
危険があれば立入調査に入る
生命または身体に重大な危険が生じているおそれがあると判断されたときは、自治体が居所へ立ち入って調査できます。必要に応じて、警察署長に援助を求める制度もあります。
ただし、立入調査に物理的な力を使う権限はありません。親族や近隣の協力を得て玄関を開けてもらうなど、準備を整えたうえでの実施です。調査に入る職員は、身分証明書を携帯します。
危険が確認された場合は、医療機関への一時入院や短期入所の利用、やむを得ない事由による入所措置などが保護の方法です。特別養護老人ホームなどへの入所措置がとられたときは、必要に応じて養護者との面会が制限されます。
ここまで進むのは、生命に関わる状態と判断された場合です。多くは、介護サービスの調整や見守りで生活を立て直す方向へ進みます。
通報者の情報は伏せられる
通報をためらう理由で多いのが、誰が知らせたのかが親御さんや施設に伝わる不安です。通報した人が誰かを伏せるのは、法律上の決まりです。
通報を受けた自治体の職員は、職務上知り得た事項のうち通報者を特定させるものを漏らしてはならないと定められています。匿名の通報も受けつけられ、その場合も内容を詳しく聞き取ったうえで対応が進みます。
なお、通報を理由に解雇などの不利益な取扱いを受けないと明記されているのは、施設で働く職員が通報した場合です。ご家族の通報に同じ規定はありませんが、通報者を特定させる情報を伏せる義務は、同じように職員へ課されています。
不安が残るときは、匿名で相談できるかを最初に確かめておくと、気持ちの負担が軽くなるでしょう。
高齢者の介護負担を減らす方法

ネグレクトを防ぐには、介護する側の負担を減らすのが確実です。高齢者虐待防止法も、虐待に至る前の段階から介護者の負担を軽くする支援を自治体に求めています。
ここでは、今の暮らしを続けながら負担を軽くする方法と、住まいそのものを移す選択肢を紹介します。
在宅サービスの利用を増やす
まず見直したいのは、いま使っている介護保険サービスの組み合わせです。訪問介護に入浴や食事の支度を任せる、通所介護の日数を増やすなど、手が回らない部分を外部に任せるだけでも、毎日の流れは変わるでしょう。
介護する側が休息をとるためのショートステイも有効です。1泊から利用できますが、介護保険が使えるのは連続30日までで、それを超えた日からは全額自己負担になります。
法律は、養護者の負担軽減のために短期入所用の居室を確保する措置を自治体に求めています。まだ虐待に至っていない段階でも、放っておけば危ういと判断されれば利用の対象です。
まずは担当のケアマネジャーへ「限界が近い」と正直に伝えましょう。ケアプランの見直しは、状況が悪くなる前ほど選べる幅が広がります。
関連記事:在宅介護サービス全21種類を一覧で解説!費用や利用の流れもわかる完全ガイド
施設への入居を検討する
在宅での介護が続けられないと感じたときは、施設への入居も現実的な選択肢です。職員が24時間常駐する施設を選べば、夜間も見守りが続き、専門職のケアを受けられます。親御さんの安全を守る土台になるでしょう。
施設に預ける判断は、見捨てる行為ではありません。共倒れになれば親御さんの暮らしも守れなくなるため、距離をとる選択がお互いを助ける場合があります。
費用や立地、認知症への対応範囲は、施設ごとにさまざまです。要介護度や医療の必要度によって選べる種類も変わるため、早めに情報を集めておくと、急に入居が必要になったときに慌てずにすみます。
どこから調べればよいか迷うときは、施設紹介の相談窓口を使うと候補を絞り込めます。
関連記事:【完全ガイド】老人ホーム入居までの流れを7ステップで解説
高齢者のネグレクトでよくある質問
最後に、ネグレクトを疑ったご家族からよく寄せられる質問にお答えします。判断に迷いやすい3つの点を確認しておきましょう。
確証がなくても通報していい?
確証がなくても相談できます。法律が通報を求めているのは「虐待を受けたと思われる」高齢者を見つけた段階で、現場を見た人だけが対象ではありません。
窓口の側も「もしかして虐待かも」と感じた時点での連絡を呼びかけています。虐待があると考えるだけの理由があれば、見誤りを恐れて黙っているより、相談したほうが親御さんを守れます。
虐待にあたるかどうかを判断するのは、事実を確認する自治体です。
気になった日の様子をメモしたうえで、地域包括支援センターへ電話で伝えてみましょう。断定せずに見たままを話すだけで構いません。
通報したのが誰か親に知られる?
原則として、親御さんや施設に通報者の名前は伝わりません。氏名を伏せた匿名の通報も受けつけられ、自治体の職員には通報者が誰かを漏らしてはならない義務が課されています。
ただし、伝え方によっては通報者が推測される場合もあるでしょう。同居するご家族しか知り得ない状況を細かく伝えると、経緯から察せられる可能性は残ります。
心配なときは、相談の最初に「名前を出さずに進めてほしい」と伝えましょう。どこまで伏せられるかは、職員と先に決めておくと安心です。
通報のあとに、自治体から連絡が入る場合もあります。連絡を受けられる時間帯や方法を先に伝えておけば、親御さんに気づかれずにやり取りを進められます。
認知症の親が支援を拒む場合、どうすればいい?
介護保険サービスの利用を強く拒まれ、そのまま手を引くと生活は崩れていきます。拒否が続く状態を放置すると放棄・放任へ近づくため、早い段階で専門職へ相談しましょう。
拒む理由は一つではありません。慣れない人に体を触られる不安、できなくなったご自身を認めたくない気持ち、体調の悪さなどが背景にあります。理由が変われば、届く声かけも変わります。
ご家族だけで説得を続けると、関係が悪くなりがちです。ケアマネジャーや地域包括支援センターに間へ入ってもらい、短時間の利用から慣らすなど、現実的な進め方を一緒に考えてもらいましょう。
受診そのものを拒む段階では、認知症初期集中支援チームが自宅を訪問し、おおむね6か月かけて医療や介護につなぐ制度もあります。設置状況は、お住まいの自治体の窓口で確かめられます。
関連記事:在宅介護の「介護拒否」はなぜ起こる?原因と場面別の正しい対応方法を解説
まとめ
高齢者のネグレクトは、高齢者虐待防止法が定める5つの虐待の一つで、意図の有無を問わず必要な世話が届いていない状態を指します。ご本人が自ら世話をやめるセルフネグレクトは法律の対象から外れますが、相談先は変わりません。
一時的に手が回らなかった日と、生活が崩れたまま続いている状態は異なります。判断は自治体が担うため、迷った時点で相談して問題ありません。
まずは親御さんの様子とご自身の介護を項目で確かめ、地域包括支援センターや自治体の窓口へ声をかけましょう。介護の負担が限界に近いときや、施設への入居を考え始めたときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。
参考サイト
- 市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について|厚生労働省
- 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(抜粋)|厚生労働省
- 令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省
- 地域包括支援センターの業務|厚生労働省
- 高齢者虐待防止|大阪府
- 大阪府における高齢者虐待の対応等について|大阪府
- サービス付き高齢者向け住宅の登録基準|大阪府
- 認知症初期集中支援チーム|大阪府
- 高齢者虐待防止の取り組み|大阪市
- 高齢者虐待の理解と防止|大阪市
- 高齢者虐待に関する通報・相談窓口|大阪市
- 生活支援型食事サービス事業|大阪市
- 高齢者虐待防止|神戸市
- 長浜市高齢者虐待対応マニュアル【概要版】|長浜市
- 高齢者虐待の早期発見のためのチェックリスト|五條市
- 短期入所サービスの長期利用に関する留意事項|忠岡町

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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