手すりの補助金はいくら出る?介護保険の支給額・自己負担・申請方法を解説

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手すりの補助金はいくら出る?介護保険の支給額・自己負担・申請方法を解説

親御さんが玄関の上がりかまちや階段でふらつくようになり、手すりを付けたいと考えていませんか?リフォーム業者の見積もりを見て、介護保険で補助が出ると聞いたものの、いくら戻るのかがわからず迷っている方もいるでしょう。

手すりの補助金の正体は、介護保険の住宅改修費です。工事費20万円までを対象に、その7〜9割が支給される仕組みになっています。自己負担が1割の方なら、最大18万円が戻る計算です。

この記事では、支給額と自己負担の決まり方、対象になる条件の3点を中心に整理します。あわせて、申請の流れと注意したい失敗、工事を待てないときの方法も解説します。

読み終えたあとには、親御さんが対象になるか、手元にいくら残るかをイメージできるようになり、ケアマネジャーへ相談するときの質問事項も自然と見えてくるでしょう。

※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。

手すりの補助金とは

手すりの取り付けに使える補助金として、まず候補になるのが介護保険の住宅改修費です。要支援・要介護の認定を受けた方が自宅に手すりを付けるとき、20万円を上限に費用の7〜9割が支給されます。

支給の上限額や対象になる工事は国が定めた全国共通の基準のため、地域によって大きく変わりません。ただし、申請書類や手続きの進め方、後述する立て替えなしの支払い方法を使えるかどうかは市区町村ごとに異なります。

ここでは、住宅改修費のしくみと、補助の対象になる設置場所を確認していきましょう。

介護保険の住宅改修費のしくみ

介護保険の住宅改修費は、自宅を安全に整えるための工事費を支給する給付です。生活の環境を整える改修が対象で、20万円を上限に費用の7〜9割が支給されます。

対象になる工事は6種類あり、手すりの取り付けのほか、段差の解消や床材の変更が代表的です。引き戸などへの扉の取り替えや洋式便器への取り替え、これらに付帯する工事も含まれます。

注意したいのは、この20万円がデイサービスなどで使う月々の利用枠(区分支給限度基準額)とは別に用意されている点です。毎月のサービスを限度額いっぱいまで使っていても、住宅改修費は別枠で申請できます。

手すりを付けられる場所

介護保険の住宅改修費は、転倒の予防や、移動・移乗の動作を助ける目的で付ける手すりが対象となります。廊下の壁を伝って歩く代わりに使う横手すりや、トイレでの立ち座りを支える縦手すりが代表的です。補助の対象になる設置場所は、以下のとおりです。

  • 廊下
  • 便所
  • 浴室
  • 玄関
  • 玄関から道路までの通路

屋外の通路まで対象に含まれる点は、あまり知られていません。門から玄関までのアプローチに段差がある住宅なら、そこも補助の対象として一緒に検討できます。

関連記事:【在宅介護の始め方】安全で快適な介護部屋の作り方|レイアウトの基本とリフォームのポイント

一方、工事をせずに置くだけの手すりは住宅改修の対象外です。こちらは福祉用具貸与の枠組みで借りられるため、後ほど詳しく紹介します。

関連記事:在宅介護サービス全21種類を一覧で解説!費用や利用の流れもわかる完全ガイド

手すりの補助金はいくら出る?

支給の対象になるのは工事費20万円までの部分で、そのうち7〜9割が戻ります。1割負担の方なら、最大18万円が支給される計算です。20万円がそのまま現金で受け取れるわけではないため、内訳から確認しましょう。

ここでは、上限20万円の中身と自己負担の決まり方、実際の計算例を紹介します。

上限20万円の内訳

20万円は工事費の上限であって、支給額の上限ではありません。支給されるのは、20万円から自己負担分を差し引いた金額です。

高砂市の案内でも、支給の上限額は負担割合に応じて18万円・16万円・14万円に分かれるとされています。工事費が20万円を超えた分は、全額が自己負担です。たとえば、25万円の工事をすると、20万円を超えた5万円は補助の対象から外れます。

なお、20万円の枠は被保険者ごとに設定されます。ただし、高砂市の案内によれば、夫婦が枠を別々に使えるのは各自専用の居室にかかる工事です。廊下や浴室など共用部分の工事は2人分の申請ができないため、実際にはどちらか一方の枠を使う形になります。

自己負担1〜3割の決まり方

自己負担の割合は、親御さんご本人の所得と世帯の状況で決まります。大阪市の基準では、本人の合計所得金額が160万円未満であれば1割です。

2割になるのは、本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満で、年金収入とその他の合計所得金額が単身世帯280万円以上(2人以上の世帯は346万円以上)の場合です。この基準に満たない場合は、所得が160万円以上220万円未満でも1割にとどまります。

3割になるのは、本人の合計所得金額が220万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額が単身世帯340万円以上(2人以上の世帯は463万円以上)の場合です。40〜64歳の第2号被保険者や、市町村民税が非課税の方、生活保護を受けている方は1割となります。

なお、この判定基準は見直しが検討されている段階です(2026年8月時点で結論は出ていません)。神戸市は「負担割合の判定は個人ごとに行うため、夫婦でも負担割合が異なることがあります」と案内しているため、親御さんご本人の介護保険負担割合証で確かめましょう。

関連記事:介護保険の『自己負担額』は年収で変わる|1割・2割・3割の負担割合の仕組みと判定基準

支給額と自己負担の計算例

実際にいくら戻るのかを、負担割合1割のケースで見てみましょう。高砂市は、負担割合1割で改修費用20万円の全額が対象になった場合、支給額は20万円から2万円を引いた18万円になる計算例を示しています。

工事費が20万円に届かない場合も、考え方は同じです。5万円で手すりを取り付けたなら、自己負担は5,000円、支給されるのは4万5,000円になります。

2割負担なら上限は16万円、3割負担なら14万円まで支給されます。負担割合が上がるほど手出しは増えますが、工事費の7割以上が戻る点は変わりません。

ただし、支給されるのは工事が終わったあとです。原則としていったん全額を業者へ支払うため、手元の資金も見ておきましょう。

手すりの取り付け費用の相場

補助の枠が20万円あっても、工事費の相場を把握しないままでは見積もりが妥当かどうか判断できません。手すりの工事費は、取り付ける場所と手すりの長さで大きく変わります。

ここでは、場所別の費用の目安と、20万円の枠に収まる工事の範囲を見ていきます。

場所別の工事費用

国が税制上の計算に使う標準額では、手すりの取り付けは長さ150cm以上で1mあたり19,600円、150cm未満で1か所あたり32,800円と定められています(国土交通省告示第384号)。ただし、これは所得税の控除額を計算するための基準で、実際に業者へ支払う金額とは別のものです。

実際の相場は、場所によって幅があります。生活サービスの比較サイトを運営するくらしのマーケット(2024年10月時点)によると、手すり設置の費用相場は3mの直線階段で3万4,000〜5万2,000円、玄関で1〜4万円、屋外の通路で5〜14万円ほどが目安です。

工事費は、地域や住宅の状態でも変動します。壁の内側に下地の補強が必要な住宅では追加の費用が発生するため、見積もりは内訳まで見せてもらいましょう。

20万円で収まる工事の範囲

手すりだけを付けるのであれば、20万円の枠にはかなり余裕があります。1か所あたり数万円の工事が中心のため、玄関・廊下・トイレ・浴室と3〜4か所に付けても枠内に収まるケースが目立ちます。ただし、下地の補強が要る住宅では1か所の単価が上がるため、見積もりで金額を押さえておきましょう。

20万円は工事の種類ごとではなく、住宅改修全体に対して設定された枠なので、枠が余りそうなときは、同じ工事のタイミングで段差の解消や床材の変更もあわせて申請できます。反対に、屋外の通路まで整えたり、階段の形状が複雑で長い手すりが必要だったりすると、20万円を超える場合があります。

超過分は全額自己負担になるため、優先順位の高い場所から工事の範囲を決めていきましょう。

手すりの補助金を使える条件

住宅改修費は誰でも使えるわけではなく、対象になる人と住まいに決まりがあります。判断のポイントは、介護保険の認定を受けているか、そして改修する住宅が生活の拠点かの2点です。

ここでは、対象になる3つの場面に分けて条件を整理します。

要支援1〜要介護5の認定がある場合

住宅改修費を使えるのは、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けた方です。認定を受けていない方や、申請の結果が非該当だった方は対象外となります。

条件になるのは、在宅で暮らしていること、認定の有効期間内に事前申請すること、必要と認められた改修を着工・完了することの3点です。年齢の面では、65歳以上の方に限りません。

40〜64歳で特定の病気により認定を受けた方も使えます。この場合、自己負担は所得にかかわらず1割となります。なお、認定の有効期間が切れていると申請できないため、更新の時期も見ておきましょう。

関連記事:要支援と要介護の違いとは?7段階の介護度別の状態、受けられるサービス、費用をわかりやすく比較解説

自宅に住民票がある場合

改修できるのは、親御さんが現に住んでいて、住民票を置いている住宅に限られます。別荘やセカンドハウスのように、住民票のない住まいは対象になりません。

そのため、住民票を移さないまま子ども世帯の家へ通っている場合、その家の手すりは対象外です。実家に手すりを付ける場合も、親御さんの住民票がその家にあるかを先に確かめておきましょう。二世帯住宅で親御さんの居室だけを改修するときも、住所が一致していることが前提になります。

施設に入所しながら月に数回だけ自宅へ帰るケースも対象外です。生活の拠点が施設にあると判断されるためで、帰省のたびに使う手すりは貸与での対応を検討しましょう。

退院・退所を控えている場合

親御さんが入院中や施設に入所中でも、自宅へ戻る予定が固まっていれば申請できます。神戸市の案内でも、退院・退所が確実で在宅生活に備えた改修が必要な場合は申請の対象です。

退院にあわせて手すりを整えておけば、戻った初日から安全に生活できます。入院中なら病院の相談員、施設に入所中なら施設の相談員や施設のケアマネジャーに見通しを共有しましょう。事前確認申請の審査に1週間から10日ほどかかるため、早めに動くほど退院・退所の日に間に合います。

ただし、この場合の支払い方法は償還払いに限られ、退院・退所できなかったときは保険給付を受けられません。高砂市も、入院・入所中は受領委任払いを使えないものの、償還払いなら相談できる場合があると案内しています。

認定前でも手すりの補助金は使える?

親御さんがふらつくようになったものの、まだ介護保険の認定を受けていないご家庭もあるでしょう。そんな状況では、認定と工事のどちらを先に進めればよいのか迷うところです。

結論をいえば、自治体へ事前申請をせずに工事を始めると補助を受けられません。認定を申請中でも事前申請を受け付ける自治体はありますが、結果が非該当なら全額自費になるため、認定を待って着工するのが安全です。

ここでは、認定がまだない段階からの進め方を、順を追って解説します。

まず要介護認定を申請する

住宅改修費を使うには、先に要介護認定の申請が必要です。申請先は、親御さんが住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口になります。

申請できるのは、次のような方です。

  • ご本人
  • ご家族
  • 地域包括支援センター
  • 指定居宅介護支援事業者

親御さんが窓口へ行けない状態でも、ご家族や地域包括支援センターが代わりに申請できます。認定結果が届くまでの期間は、京都市によると「原則として、申請の日から30日以内」とされています。1か月ほど先を見込んで動きましょう。

申請には介護保険の被保険者証が必要で、主治医の意見書は市区町村が医師へ直接依頼します。かかりつけ医がいない場合は、窓口で相談すると医療機関を案内してもらえます。

関連記事:要介護認定とは?申請方法からサービス利用開始までの流れと老人ホーム選びの関連性

要支援でも住宅改修を利用できる

認定の結果が要支援1・2だったとしても、住宅改修費は利用できます。要介護の認定でなければ対象外と思い込み、申請をためらうご家族もいますが、要支援でも上限20万円の枠は同じです。

違いが出るのは、相談する窓口です。要支援1・2の方は地域包括支援センター、要介護1〜5の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが窓口になります。どちらへ相談すればよいか迷ったら、自治体の介護保険担当窓口で教えてもらえます。

要支援の段階は、転倒を防いで今の暮らしを保つのに適した時期です。認定が軽いからと様子を見るより、動ける段階で住まいを整えておくほうが、要介護度の進行をゆるやかにできる場合があります。

結果を待つ間に業者を探す

認定を申請してから結果が出るまでの1か月は、業者選びの時間に充てましょう。枚方市は「新規要介護認定申請中の場合は、要介護(要支援)認定結果が出るまでは支給申請はできません」と明記しており、工事費が戻るのは認定結果が出たあとになります。

この期間にできるのは、複数の業者から見積もりを取って内容と金額を比較する準備です。認定が下りてから業者を探し始めると、着工までにさらに数週間かかってしまいます。

注意したいのは、認定が非該当となる可能性です。枚方市は「認定結果が非該当となった場合は、介護保険は適用されず、全額自費となります」と説明しているため、結果が出る前の着工は避けましょう。高砂市のように、認定申請中でも償還払いなら相談できる自治体もあります。

工事なしで手すりを付ける方法

工事による住宅改修では、相談から書類の準備、自治体の審査を経て着工するまでに数週間かかります(枚方市の場合、申請から通知までの目安は1週間から10日程度)。今日明日にでも支えがほしい状況なら、工事のいらない手すりを介護保険で借りる方法があります。

ここでは、福祉用具貸与で手すりを借りる流れと、選び方の考え方を紹介します。

福祉用具貸与で手すりを借りる

介護保険には、用具を購入せずにレンタルして使う「福祉用具貸与」の枠組みもあります。車いすや歩行器などと同様に、取り付け工事のいらない手すりも13の対象品目に入っており、自己負担1〜3割でレンタル可能です。

しかし、車いすや特殊寝台など8つの品目は、要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外です。一方、手すりはこの制限に含まれないため、要支援の段階からでも借りられます。

ただし、住宅改修費と違って福祉用具貸与は月々の利用枠のなかで使うため、枠に余裕があるかもケアマネジャーに聞いておきましょう。

工事を伴わないため、事前申請から工事完了までの数週間を待つ必要がありません。認定さえ受けていれば、ケアマネジャーへの相談から数日で自宅に届く場合もあります。玄関やトイレなど、今危ないと感じている場所から先に対応しましょう。

関連記事:介護用品はレンタルと購入どっちがお得?介護保険の対象品目や料金、利用方法を解説

借りられる手すりの種類を選ぶ

借りられる手すりは、大きく2つの型に分かれます。床に置いて使う型と、便器やポータブルトイレを囲んで据え置く型です。

床置き型は、玄関の上がりかまちやベッドの脇など、立ち座りの動作が多い場所に向いています。便器を囲む型の用途は、トイレでの立ち上がりの支えです。置くだけの型は工事がいらないぶん、使ってみて合わなければ別の型に替えられます。

福祉用具貸与は、ほかの介護サービスとは異なり国の定めた価格がないため、同じ型の手すりでも借りる事業所によって月額に差が出ます。金額はケアマネジャー経由で見積もりを取り、実際の負担額を確かめましょう。

ケアマネジャーに貸与を相談する

貸与を使うときの窓口は、担当のケアマネジャーです。要支援1・2の方であれば、地域包括支援センターが相談先になります。

福祉用具貸与の指定を受けた事業者が、心身の状況や生活環境を踏まえて、用具を選ぶ援助から取り付け・調整までを担います。福祉用具専門相談員が自宅を見て、動線に合う型と高さを提案してくれるため、ご家族だけで選ぶ必要はありません。

まずは工事なしで様子を見て、生活が落ち着いてから住宅改修に切り替える進め方もできます。貸与は月ごとの契約のため、体の状態が変わって必要がなくなれば返却できます。今日の転倒を防ぐ手立てから、ケアマネジャーに相談してみましょう。

手すりの補助金を申請する流れ

住宅改修費は、工事の前と完了後に2回の申請が必要です。順番を間違えると支給を受けられないため、全体の流れを先に押さえておきましょう。

ここでは、相談から支給までの手順を4つの段階に分けて解説します。

ケアマネジャーに改修を相談する

住宅改修を考え始めたら、まず担当のケアマネジャーに相談しましょう。手すりを付けたい場所と親御さんの動きにくさを伝えると、必要性の確認から書類の準備まで一緒に進められます。

申請に必要なのが「住宅改修が必要な理由書」です。作成するのは担当のケアマネジャーで、要支援1・2の方は地域包括支援センターの職員が日常的な支援の一環として用意します。枚方市の手引きに示されているのも、ケアマネジャーが施工業者と連携して事前確認申請の書類をそろえる流れです。

枚方市は厚生労働省が推奨する進め方として、業者を決める前に複数の見積もりを取るようすすめています。金額だけでなく工事の範囲を比較する材料になり、業者によって手すりの本数や位置が変わるため、見積書は内容まで見比べましょう。

関連記事:地域包括支援センターとは?役割や相談できる内容、利用方法をわかりやすく解説

工事前に市区町村へ申請する

業者と工事の内容が固まったら、着工の前に自治体の窓口へ書類を提出します。枚方市はこの手続きを事前確認申請と呼び、必要書類をそろえて「必ず改修の着工前に」提出するよう求めています。提出するのは、支給申請書のほか、ケアマネジャーが作成する理由書や工事の見積書、改修前の写真などです。

書類を出したあと、自治体が内容を審査します。枚方市の場合、事前確認通知書が届くまでの目安は1週間から10日ほどで、この通知が届いてから工事を始める流れです。

事前確認通知書が届いてから3か月の間に着工できなかった場合は、一度取り下げの手続きが必要になります。業者の都合で着工が延びそうなときは、早めに窓口へ相談しましょう。

完成後に支給申請を出す

工事が終わったら、2回目の申請として支給申請を出します。改修の前と完了後にそれぞれ申請が必要で、事前申請だけでは支給されません。

提出するのは、領収証や改修後の写真などです。業者へ費用を支払った領収証が必要になるため、受け取ったら申請まで大切に保管しておきましょう。工事の前後を同じ角度で撮った写真を求める自治体もあり、着工前の写真も残しておくと安心です。

高砂市の場合、支給の時期は「改修工事後の事後申請月の翌月末頃」が目安です。なお、住宅改修費を受け取る権利は介護保険法により2年で時効になるため、工事費を支払ったら早めに支給申請を出しましょう。

立て替えなしの受領委任払いを選ぶ

支払い方法には償還払いと受領委任払いの2種類があります。償還払いは、いったん全額を施工事業者に支払い、9割・8割・7割にあたる額があとから戻る方式です。

一方、受領委任払いは当初から1割・2割・3割の自己負担で済むため、まとまった資金を用意せずに工事を始められます。自己負担1割の方が20万円の工事をするなら、業者に支払うのは20万円ではなく2万円だけです(2割なら4万円、3割なら6万円)。

ただし、受領委任払いを選べない場面もあります。神戸市が挙げるのは、次のような場合です。

  • 入院・入所中の退院時改修
  • 認定結果がまだ出ていない
  • 保険料の滞納による給付制限
  • 施工業者が合意しない

受領委任払いは自治体の運用による方式のため、使えるかどうかは事前に窓口へ聞いておきましょう。

手すりの補助金でよくある失敗

住宅改修費は、手順を一つ間違えるだけで、その工事の費用が全額自己負担になります。自治体が真っ先に注意を促しているのも、書類より前に工事が進んでしまうケースです。

ここでは、支給を受け損ねやすい3つの失敗と、その防ぎ方を紹介します。

申請より先に工事を始めてしまう

最も多い失敗が、事前確認申請の前に着工してしまう例です。枚方市は「この事前確認申請をしなかった場合、住宅改修費の支給はできません」と明記しており、あとから書類をそろえても支給は受けられません。

業者から「すぐ付けられますよ」といわれて、その場で工事をお願いしてしまう流れが典型です。親御さんの転倒が心配な時期ほど急ぎたくなりますが、着工は自治体からの通知を待ってからにしましょう。

急いで安全を確保したいときは、工事ではなく福祉用具貸与で手すりを借りる方法があります。借りている間に申請を進めれば、支給を受け損ねずに当面の安全も守れます。

所有者の承諾書を用意し忘れる

改修する住宅の所有者が親御さんご本人でない場合は、所有者の承諾書が必要です。枚方市の手引きには「同居する配偶者、家族、同居状態にない家族、借家の場合は家主等からの承諾が必要」と書かれています。

見落とされやすいのが、家族名義や共有名義の住宅です。枚方市は、申請者と家族が共同で所有する住宅でも、共同所有者からの承諾書を添付するよう求めています。

賃貸住宅では、家主や管理会社への確認に時間がかかる場合があります。実家の名義が親御さんではなく子ども世帯になっているケースもあるため、登記の名義を早めに確かめておきましょう。承諾書の様式は、自治体の窓口やホームページで配布されています。

対象外の工事まで見積もりに入れる

見積もりに対象外の工事が混ざっていると、その分の費用は自己負担になります。手すりの取り付けに付随しない壁紙の張り替えや、住宅の老朽化に伴う修繕が代表例です。

対象かどうかの線引きは支給の可否に関するもので、自費での工事まで制限されるわけではありません。対象外の工事を同時に進めても構いませんが、見積もりは分けてもらいましょう。

工事の内容が申請したものと変わった場合も、変更部分が対象から外れる可能性があります。工事中に追加をお願いしたくなったら、その場で決めず、まず業者と自治体に問い合わせましょう。追加の工事だけを別に申請できる場合もあります。

手すりの補助金は1回だけ?

住宅改修費は「1人1回まで」と説明される場合がありますが、正確には金額の枠が1人あたり20万円と決まっているだけです。使い切っていなければ、複数回に分けて利用できます。

ここでは、20万円の枠の考え方と、枠が新しく設定される条件を見ていきます。

1人生涯20万円の原則

住宅改修費の枠は、1人あたり生涯で20万円です。工事のたびに20万円がもらえるわけではなく、過去に使った分が差し引かれていきます。

要介護度による差はありません。要支援1でも要介護5でも、使える枠は同じ20万円です。枠を使い切ったあとの工事は、全額が自己負担になります。

枠は住宅ではなく、一人ひとりに付く点も押さえておきましょう。夫婦がともに認定を受けていれば、20万円の枠はそれぞれに用意されます。

これまでに使った金額がわからないときは、自治体の窓口で残額を確認できます。親御さんが以前に段差の解消などで枠を使っている可能性もあるので、工事の前に窓口へ聞いてみましょう。

枠がリセットされる2つの条件

20万円を使い切ったあとでも、枠が新しく設定される場合が2つあります。要介護状態の区分が3段階以上重くなったときと、転居したときです。

高砂市は、最初に工事をしたときの区分ごとに、リセットの対象になる区分を次のように示しています。

最初に工事をしたときの区分 リセットされる区分
要支援1 要介護3・4・5
要支援2・要介護1 要介護4・5
要介護2 要介護5
要介護3・4・5 リセットなし

転居した場合は、転居前の支給状況にかかわらず、転居後の住宅について20万円まで支給されます。ただし、枚方市の手引きによれば、初回の残額を新しい枠へ上乗せはできません。前の枠に残っていた分は繰り越されず、転居後は20万円を上限に一から使い始めます。

複数回に分けて使う方法

20万円は一度に使い切る必要がありません。残りが0円になるまでは、枠の範囲で何回でも支給を受けられます。

初回に玄関と廊下の手すりで8万円を使った場合、次の工事に回せる金額は残りの12万円です。親御さんの状態が変わってから、トイレや浴室の手すりを追加する使い方もできます。

分けて使うときは、その都度事前申請が必要です。1回目の工事のときに残額を確認し、次の工事の時期をケアマネジャーと話しておくと、枠を無駄なく使えます。残額の範囲であれば、対象になる6種類の工事のうちどれに使っても構わないため、手すりの次に段差の解消へ回す進め方もできるでしょう。

介護保険以外に使える手すりの補助金

介護保険の20万円で足りないときや、対象外の工事を含める場合は、ほかの制度も検討できます。大きく分けて、国の補助事業、自治体独自の助成、税の軽減の3つです。

ここでは、手すりの設置で使える可能性がある制度を順に取り上げます。

みらいエコ住宅2026事業

みらいエコ住宅2026事業は、国土交通省が進める住宅省エネ支援事業です。バリアフリー改修の一つに手すりの設置が含まれ、何か所に付けても1戸あたり7,200円が補助されます。

ただし、手すりだけを付けて受け取れる補助金ではありません。この事業は断熱改修などの必須工事とあわせて申請する仕組みで、バリアフリー改修だけの単独申請は対象外です。

申請できるのは登録を受けた施工業者に限られ、工事の発注者は直接手続きできません。対象となるのは、2025年11月28日以降に着手した工事です。

交付申請の受付は遅くとも2026年12月31日までで、予算の上限に達した時点で終了します。断熱改修も同時に考えているご家庭は、業者にこの事業を扱えるか聞いてみましょう。

自治体独自の上乗せ助成

自治体には、介護保険の20万円とは別に住宅改修を助成する制度があります。大阪市の高齢者住宅改修費給付事業は、介護保険の住宅改修と同時に進める工事のうち、介護保険の支給対象にならない部分の費用を給付する市独自の制度です。

大阪市では給付額が介護保険料の段階で分かれ、市民税非課税世帯なら30万円までの工事費の9割が給付されます。ただし、給付は1世帯1回限りで、介護保険の枠がリセットされても再び使えません。

兵庫県の人生いきいき住宅助成事業(住宅改造型)は、介護保険の住宅改修費とあわせて1世帯100万円までの工事費が対象で、その3分の1以上が助成されます。神戸市にも独自の住宅改修助成事業があります。いずれも所得制限があり、着工前の申請が条件のため、住んでいる自治体の窓口へ早めに問い合わせましょう。

関連記事:【知らないと損】老人ホームの費用を安くする補助金・助成金制度を一覧で解説!申請方法や相談窓口も紹介

バリアフリー改修の減税制度

手すりの取り付けは、税の軽減の対象にもなる工事です。所得税では、バリアフリー改修の特例控除が令和10年12月31日まで設けられ、標準的な工事費用相当額をもとに計算した金額が差し引かれます。

固定資産税でも、新築から10年以上経過した住宅で一定のバリアフリー改修をすれば、翌年度分の税額が3分の1減額されます。適用期限は令和13年3月31日までで、補助金を差し引いた工事費用が50万円を超える改修などが対象です。減額の対象は床面積100平方メートル相当分までで、家屋全体の税額が3分の1になるわけではありません。

固定資産税の減額を受けるには、工事完了から3か月以内に自治体へ申告します。介護保険の住宅改修費を受け取った場合はその分を差し引くため、支給額がわかる書類をそろえておきましょう。

手すりの補助金でよくある質問

最後に、手すりの補助金についてご家族からよく寄せられる質問をまとめます。判断に迷う2つの疑問にお答えします。

賃貸住宅でも手すりは付けられる?

賃貸住宅でも、家主の承諾があれば住宅改修費の対象です。借家の場合は、家主や管理会社から承諾書をもらう必要があります。

所有者が親御さんご本人でない住宅は、賃貸に限らず承諾書が必要です。賃貸だから使えないと諦める前に、まず管理会社や家主へ相談してみましょう。

退去のときに原状回復を求められるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。承諾を得るまでに日数がかかる場合もあるため、ケアマネジャーへの相談と並行して家主へ連絡しておきましょう。

持ち家か賃貸かで、使える枠が変わることはありません。工事なしで置ける手すりを福祉用具貸与で借りる方法なら、住宅に手を加えずに済みます。

自分で取り付けても補助金は出る?

ご家族が手すりを取り付けた場合でも、部材の購入費は支給の対象になります。高砂市は、ご本人やご家族が材料を購入して取り付けた場合、一般的には部材の購入費のみが支給対象となり、工賃は対象外とするのが適当だと説明しています。この場合も事前申請は必要で、取り付けてから申請しても対象外です。

なお、手すりは体重を預ける設備のため、下地の位置や高さを誤ると支えの役目を果たしません。壁の内側に補強が必要な住宅も多く、費用の大半が補助でまかなえる点を踏まえると、業者に依頼するほうが安心でしょう。ご家族で取り付けるなら、材料を買う前に対象になる部材かどうかをケアマネジャーに見てもらいましょう。

まとめ

手すりの補助金は、介護保険の住宅改修費として工事費20万円までの7〜9割が支給されます。要支援1・2から要介護5までの認定を受け、住民票のある自宅を改修する場合が対象で、40〜64歳の方も特定の病気による認定があれば利用できます。

押さえておきたいのは、着工の前に申請を済ませる順番です。まずはケアマネジャーか地域包括支援センターに相談し、複数の業者から見積もりを取ったうえで、自治体へ事前確認申請を出しましょう。工事を待てないときは、福祉用具貸与で工事のいらない手すりを借りる方法もあります。

親御さんに合う手すりの位置や、在宅を続けるか施設を考えるかで迷ったときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。

参考サイト

このコラムの監修者

花尾 奏一(はなお そういち)

保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

有料老人ホームにて介護主任を10年 
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施

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