親の介護は義務?扶養の範囲から拒否できる条件まで解説

親御さんの介護が現実味を帯びてくると「法的にどこまでやる義務があるのか」と不安になっていませんか?親御さんとの関係が良くない場合は、拒否できないものかと悩む方もいるでしょう。
この記事では、親御さんの介護の義務がどこまでか、介護をしないと罪に問われるのかを整理します。また、費用は誰が払うのか、拒否したいときの対処や施設の選択肢まで解説します。
読み終えたあとには、ご自身が負う義務の範囲がはっきりし、生活を守りながら親御さんを支える方法を落ち着いて選べるようになるでしょう。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。
親の介護は子の義務か
親御さんが高齢になり介護が必要になると、子であるあなたにどこまで義務があるのか気になるものです。法律では子に一定の扶養義務が定められていますが、その中身は多くの方がイメージするものとは違います。
ここでは、民法が定める扶養義務の意味や、義務を負う人の範囲を見ていきます。
民法が定める扶養義務
親の介護に関する義務の根拠は、民法にあります。民法877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めており、親と子は互いに支え合う関係です。
ここでいう扶養とは、主に経済的な援助を指します。収入だけで生活できない親をお金の面で支える義務という意味で、身のまわりの世話そのものを求める規定ではありません。
「介護=身体的な世話」と「扶養=経済的な支援」を切り分けて考えると、後の話が理解しやすくなります。
子が介護する義務の有無
結論からいうと、子が自らの手で親を介護しなければならない法的義務はありません。民法が定める扶養義務は経済的な援助が中心で、同居して身体介護をする点までは求めていないためです。
離れて暮らす親御さんに生活費を仕送りしたり、介護サービスの費用を負担したりするだけでも、扶養義務を果たしたことになります。実際に手を動かすのが、ヘルパーや施設の職員でも問題はありません。
「子が親の面倒を見るのが当たり前」という見方は根強いものの、それは法律上の強制ではなく社会的な価値観です。自ら介護するかどうかは、ご家族の状況にあわせて選べると理解しておきましょう。
扶養義務者になる人の範囲
扶養義務を負うのは、親から見た直系血族と兄弟姉妹です。子や孫などの直系血族に加え、きょうだいも対象に含まれます。親の介護では、子が中心的な扶養義務者です。
特別な事情がある場合は、家庭裁判所が三親等内の親族に扶養義務を課すこともあります。三親等内にはおじ・おば・おい・めいなどが含まれますが、これは例外的な扱いです。
複数の子がいる場合、扶養義務に法律上の優先順位はありません。誰がどう負担するかは話し合いで決め、まとまらないときは家庭裁判所の調停で調整します。
義務と強制の違い
扶養義務があるといっても、それはご自身の生活を犠牲にしてまで果たすものではありません。義務はあくまで「余力がある範囲で支える」もので、無条件の強制とは異なります。
毎日の生活で精一杯の家庭が、借金をしてまで親御さんの費用を負担する義務まではありません。援助できる余裕がどれくらいあるかによって、果たすべき範囲は変わります。収入や家族構成によって、余裕をもって出せる金額は人それぞれです。
大切なのは、義務という言葉に縛られて一人で背負い込まないことです。法律が求めるのは「できる範囲での支え」であり、その線引きを知ると気持ちが軽くなるでしょう。
介護の義務はどこまで負うのか
扶養義務があるとわかっても、実際にどこまでやればよいのかは判断に迷うところです。法律には「生活扶助義務」という考え方があり、これが子の負担の範囲を示す手がかりになります。
ここでは、義務の程度を表す2つの考え方と、ご自身の生活を優先してよい理由を解説します。
生活扶助義務と生活保持義務の違い
扶養義務には、程度の異なる2つの種類があります。1つは扶養する側と同じ水準の生活を相手に保障する「生活保持義務」、もう1つは余力の範囲で支える「生活扶助義務」です。
夫婦の間や、親から幼い子への義務は生活保持義務にあたります。一方、成人した子が親に負うのは生活扶助義務です。両者は言葉が似ていても、求められる重さがまったく異なります。
親御さんと同居していても、ご自身の家計を切り詰めてまで援助する必要はありません。つまり、親御さんの介護で子が負うのは、ご自身の生活を保ったうえで余裕があれば支える義務です。
余力の範囲で援助すればいい根拠
成人した子が親に負う扶養義務は、扶養する側の生活を守ることを前提にした生活扶助義務です。ご自身やご家庭の暮らしを壊してまで、親御さんを支えることは求められていません。
裁判所も、扶養義務者が支払う扶養料は「余力の範囲内」で足りるという考え方を示しています。ご自身の社会的な立場に見合った生活を保ったうえで、残った余裕の中から援助すればよいという意味です。生活に余裕がない場合は、援助できないと判断されることもあります。
親御さんの介護費用を、全額肩代わりする義務はないと考えておきましょう。まずはご自身の生活を土台に置き、支えられる範囲を冷静に見極めましょう。
ご自身の生活を優先してよい理由
親御さんの介護でご自身の生活を後回しにしすぎると、介護する側も共倒れになる恐れがあります。だからこそ生活扶助義務は、ご自身の暮らしを優先してよいという考え方です。
介護のために仕事を辞めたり、貯蓄を使い果たしたりすると、介護する側の将来が立ち行かなくなります。長く支え続けるには、ご自身の生活の基盤を保つ視点が必要です。特に働き盛りの世代では、収入源を守る意識がご家族全体の安心につながります。
罪悪感を抱え込む方もいますが、ご自身の生活を守る選択は決してわがままではありません。その暮らしを土台に据えたうえで、できる支援を考えていきましょう。
義務を果たしたといえる最低ライン
「どこまでやれば義務を果たしたといえるのか」は、多くのご家族が抱く疑問です。自ら介護をしなくても、いくつかの行動を押さえれば扶養義務は果たせます。
ここでは、義務を果たしたといえる3つの行動を見ていきます。
金銭面で親を支える
扶養義務の中心は経済的な援助のため、まずは金銭面で親御さんを支えるのが基本になります。親御さんの年金や貯蓄で生活費や介護費が足りない場合に、余力の範囲で不足分を補います。
施設費のうち年金で払えない分の仕送りや、医療費の一部負担が代表的です。同居して身体介護をしなくても、こうした金銭的な支えで義務は果たせます。仕送りの金額は、親御さんの不足分とご自身の家計を見比べて決めると安心です。
できる範囲でお金を出すのが、扶養義務の土台です。全額を負担する必要はないため、ご自身の生活とのバランスを見ながら支える額を決めましょう。
介護サービスや施設を手配する
自ら介護しない代わりに、介護サービスや施設を手配して親御さんの暮らしを整えるのも、義務を果たす行動の一つです。プロにケアを任せる段取りを担うのも、立派な支えになります。
たとえば、ケアマネジャーに相談してデイサービスや訪問介護を組む、入居できる施設を探して契約を進めるといった動きが挙げられます。遠方に住んでいても、電話やオンラインで手続きを進められるでしょう。
親御さんのそばにいられなくても、必要なサービスにつなぐ役割はご家族にしか担えません。まずはどのような支援が使えるかを調べ、専門職と一緒に体制を整えていきましょう。
放置せず専門職につなげる
最低限守りたいのは、親御さんを危険な状態のまま放置しない姿勢です。自ら介護する義務はなくても、助けが必要な親御さんを見過ごすと、後述する罪に問われる場合があります。
そのため、ご自身で対応できないときは、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門職に必ずつなぎましょう。窓口に状況を伝えれば、必要な支援や施設の手配を一緒に考えてくれます。
連絡を受けた窓口は、必要に応じて自治体や医療機関とも連携できる立場です。ご自身がすべてを抱える必要はなく、適切な窓口に橋渡しするだけでも役割は果たせます。
親の介護をしないと罪に問われるのか
「介護をしないと罪になるのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。自ら介護しないこと自体は罪ではありません。ただし、助けが必要な親御さんを放置すると、法律で罰せられる場合があります。
ここでは、どのようなときに罪へ問われるのか、その線引きを見ていきます。
保護責任者遺棄罪が成立する要件
親御さんを放置して危険にさらすと、保護責任者遺棄罪に問われる場合があります。高齢者や病気の人などを保護する責任のある人が、その人を遺棄したり、生きるために必要な世話をしなかったりしたときに成立する罪です。
刑法218条では、この罪の罰則を3か月以上5年以下の拘禁刑と定めています。介護が必要な親と同居しながら食事や医療を与えず、命や健康を危険にさらせば、罪に問われる可能性があります。
問われるのは、保護する責任がある人が必要な世話を怠った点です。自ら介護するかどうかではなく、親御さんを危険な状態に置いたかどうかが判断されると理解しておきましょう。
罪に問われやすい放置のケース
保護責任者遺棄罪が問題になりやすいのは、親御さんと同居して助けられる立場なのに、必要な世話をしなかった場合です。同居しているほど、保護する責任は認められやすくなります。
罪に問われる恐れがある行動には、次のようなものがあります。
- 食事を与えず栄養状態が悪化
- 必要な受診をさせず放置
- 冬場に暖房を使わせない
- 助けを呼ばず衰弱させる
こうした行動が命や健康を脅かすと、罪に発展する場合があります。過去には、同居する親の介護を放棄して死亡させ、保護責任者遺棄致死罪に問われた事例もあります。
大切なのは、危険な兆候を見て見ぬふりしない点です。ご自身で対応できないなら、行政や専門職に助けを求める流れをつくっておきましょう。
拒否と放棄の分かれ目
同じように介護を引き受けない場合でも「拒否」と「放棄」は意味が異なります。拒否は、自ら介護せずサービスや施設に任せる選択で、これ自体は罪になりません。
反対に、放棄は助けが必要な親御さんを誰にも委ねず、危険な状態で見過ごす行動です。この放棄が命や健康を脅かすと、保護責任者遺棄罪に問われる恐れがあります。
両者を分けるのは、親御さんの安全が確保されているかどうかです。施設やサービスに委ねていれば、直接介護をしなくても放棄にはあたりません。自らの手で介護をしない場合でも、放置だけは避けましょう。
親の介護を拒否したいときの対処
親御さんとの関係が良くない、過去につらい経験があるなど、介護に前向きになれない事情を抱える方もいるでしょう。無理に抱え込まず、放置も避けながら距離を取る方法があります。
ここでは、介護を引き受けたくないときに取れる3つの対処を紹介します。
親と適度な距離を保つ
関係が悪い親御さんの介護を一人で背負い込むと、ご自身の心身が壊れてしまいます。過去に虐待や強い確執があった場合は、適度な距離を保つ判断も一つの選択です。
ご自身で直接ケアをせず、サービスや施設に任せれば、顔をあわせる負担を減らせます。距離を取る判断は冷たさではなく、ご自身を守るための現実的な対応です。連絡はケアマネジャーを通す、面会は控えめにするなどして、距離を取りましょう。
罪悪感を抱く必要はなく、親御さんの安全さえ確保できれば関わり方は自由に選べます。こうした選択は、決して責められるものではありません。まずはご自身が壊れない距離を見つけ、その範囲でできる支えを考えましょう。
つらい事情を公的窓口に伝える
親御さんを介護できない事情があるときは、地域包括支援センターなどの公的窓口に正直に伝えましょう。過去の確執やご自身の生活の事情を共有すれば、公的な支援につないでもらえます。
虐待を受けてきた経緯やご自身の体調を伝えると、窓口が親御さんの支援体制を整えるように動いてくれます。事情を抱え込まず打ち明けるほど、ご家族以外の力を借りやすくなるでしょう。
話した内容がそのまま親御さんに伝わることはなく、安心して相談できます。一人で判断せず専門機関に相談する動きが、親御さんの安全とご自身の生活の両立につながります。
直接の介護を第三者に任せる
親御さんと顔をあわせるのがつらいときは、直接のケアを第三者に委ねてかまいません。ご自身が直接手を動かさなくても、親御さんが必要な支援を受けられれば、子としての務めは十分に果たせます。
肝心なのは、すべてをご自身で背負おうとしない点です。関係が良くない状況であっても、プロに任せれば感情をすり減らさずに済み、親御さんも安定したケアを受けられます。
「介護は身内がやるもの」という思い込みを手放すと、気持ちはずっと軽くなるでしょう。任せるのは投げ出しではなく、親御さんとご自身の双方を守る前向きな選択だと考えておきましょう。
親の介護費用は誰が払うのか
介護には毎月まとまったお金がかかるため、誰が負担するのかは大きな心配ごとです。原則は親御さん自身の資産でまかない、子は余力の範囲で支えます。
ここでは、費用を負担する原則と、負担を軽くする制度や相場を見ていきます。
親の財産でまかなう原則
介護費用は、まず親御さん自身の年金や預貯金でまかなうのが原則です。介護保険の制度は、利用者の資産や収入に応じて負担する考え方を基本にしています。
子には、親の介護費用を直接支払う法的な義務はありません。親御さん自身の資産で生活できないときに、扶養義務として余力の範囲で援助する立場にとどまります。親御さん名義の預貯金や不動産があれば、まずはそれを介護費用に充てるのが基本です。
まずは親御さんの資産で払えるかを確認し、不足する分だけをご家族で考えていきましょう。施設に入るなら、まとまった費用が動くので、なおさら事前の確認が肝心です。親御さんの通帳や年金額を早めに把握しておくと、費用の見通しが立てやすくなります。
関連記事:老人ホームの費用は誰が払う?親の資産で足りない場合の対処法と補助制度を解説
子に求められる負担の範囲
子が費用を負担する場合でも、その範囲は余力のある分に限られます。ご自身の生活費や教育費を削ってまで、親御さんの費用を全額肩代わりする立場にはありません。
毎月の収支に余裕がない家庭が、高額な施設費を負担し続けなくてよいという考え方です。負担できる額は、それぞれの家庭の家計によって変わります。過度な肩代わりは、介護する側の家計まで共倒れさせる原因になります。
きょうだいがいる場合は、一人で抱えず分担するのが望ましいでしょう。一人だけが負担を抱えると、あとで不公平感からもめる原因になります。誰がいくら出せるかを早めに話し合い、できる範囲で分け合いましょう。
負担を軽くする公的な制度
介護費用の負担が重いときは、公的な軽減制度を活用できます。制度を知らずに払い続ける家庭もあるため、使える仕組みを早めに確認しておくと安心です。
負担を軽くする主な制度は、次のとおりです。
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算制度
- 特定入所者介護サービス費
- 医療費控除
高額介護サービス費は、1か月の介護費の自己負担が所得ごとの上限を超えたとき、超えた分が申請で戻る制度です。ただし、家賃や食費は対象外のため、すべての費用が戻るわけではありません。
どの制度が使えるかは、親御さんや世帯の状況によって変わります。自治体の窓口やケアマネジャーに、当てはまる制度がないか相談しておきましょう。
施設や在宅にかかる相場
介護にかかる費用は、在宅か施設かで大きく変わります。生命保険文化センターの2024年度の調査では、月々の介護費用は平均9.0万円で、在宅が平均5.3万円、施設が平均13.8万円でした。
住宅改修や介護ベッドの購入など、一時的な費用も平均47.2万円ほどかかります。介護の期間は平均で55.0か月、およそ4年7か月に及ぶため、長期の出費として見込んでおきましょう。在宅でも、介護用品やサービスの利用が増えれば費用はふくらみます。
相場はあくまで目安で、要介護度やサービスの使い方で金額は上下します。まずは親御さんの状態に近いケースで費用を試算し、無理なく続けられるかを確かめましょう。
親の介護を一人で抱えない方法
親御さんの介護は、一人で背負うほど心身の負担が大きくなります。きょうだいや公的な窓口、介護サービスをうまく使えば、負担を分散させながら支えられるでしょう。
ここでは、抱え込みを防ぐための4つの方法を見ていきます。
兄弟姉妹と役割を分担する
親御さんの介護は、きょうだいで役割を分け合うと一人あたりの負担が軽くなります。すべてを平等にする必要はなく、それぞれができる範囲で関わるのが長続きのコツです。
分担するときは、できることを一つずつ出し合うと決めやすくなります。たとえば「週末は実家に行ける」「金銭的な援助なら月◯万円まで」「役所の手続きは引き受ける」というように、担当を分けていきます。
お金の負担は、記録に残しておくと安心です。離れて住むきょうだいは、費用の負担や情報のとりまとめを担う方法もあります。誰がいつ何にいくら使ったかを共有し、不公平感が生まれないように支え合いましょう。
関連記事:親の介護で兄弟姉妹トラブル役割分担や費用でもめないための解決策
地域包括支援センターに相談する
介護に迷ったら、まず地域包括支援センターに相談しましょう。自治体が設置する高齢者の総合相談窓口で、介護の困りごとを無料で相談できます。
ここでは、要介護認定の申請の案内や、使えるサービスの紹介、ケアマネジャーへの橋渡しまで対応してくれます。何から始めればよいかわからないときの、最初の入り口として頼れる存在です。介護保険を使ったことがない段階でも、気軽に立ち寄れます。
相談は電話でも受け付けており、担当は親御さんが住む地域の窓口です。どこの窓口かわからないときは、自治体の役所に問い合わせると教えてもらえます。一人で悩まず、早めに専門の窓口へつないでもらう流れをつくっておきましょう。
介護保険サービスを活用する
直接の介護を抱え込まないためには、介護保険のサービスを積極的に使うのが近道です。要介護認定を受ければ、費用の1~3割の自己負担でさまざまなサービスを利用できます。
代表的なのは、自宅に来てもらう訪問介護、日中に通うデイサービス、短期間だけ預かってもらうショートステイなどです。これらを組み合わせれば、ご家族が付きっきりにならずに親御さんの暮らしを支えられます。短期入所を挟めば、介護する側が休息を取る時間も確保できます。
どのサービスが合うかは、ケアマネジャーがケアプランを立てて提案してくれるでしょう。まずは要介護認定を受けて、どのようなサービスを使えるか調べておきましょう。
関連記事:介護保険とは?制度の仕組み・サービスの種類・利用の流れをわかりやすく解説
仕事と両立できる制度を使う
介護のために仕事を辞めると、その後の生活が立ち行かなくなります。介護離職を避けるために、仕事と介護を両立する公的な制度を活用しましょう。
代表的なのが、介護休業制度です。対象となる家族1人につき通算93日まで、3回に分けて休業でき、雇用保険から休業前の賃金の67%が給付されます。休業を始める2週間前までに、勤務先へ書面などで申し出る流れです。
制度を使えば、施設探しや在宅体制づくりの時間を確保できます。通院の付き添いなどに使える介護休暇という別の制度もあり、短い休みが必要なときに役立ちます。まずは勤務先の担当部署に、使える制度がないか問い合わせてみましょう。
関連記事:介護休業制度とは?介護休暇との違いや給付金の条件、申請方法をわかりやすく解説
親の介護に備えてできること
介護は、ある日突然始まるケースも多くあります。親御さんが元気なうちに準備しておけば、いざというときに慌てずにすむでしょう。
ここでは、介護が始まる前にしておきたい2つの備えを紹介します。
元気なうちに方針を話し合う
親御さんが元気なうちに、介護の方針をご家族で話し合っておきましょう。判断力があるうちにご本人の希望を聞いておけば、いざというときの選択で迷いにくくなります。
たとえば、在宅と施設のどちらを望むか、延命治療をどう考えるかなどを、少しずつ確認しておきます。きょうだいがいる場合は、誰がどう関わるかもあわせて共有しておくとよいでしょう。エンディングノートを使うと、親御さんの希望を書き残してもらいやすくなります。
話し合いは一度で終わらせず、その都度重ねるのが基本です。親御さんの意向とご家族の事情をすり合わせ、実行できる方針を一緒に描いておきましょう。
親の財産状況を確認する
介護費用の見通しを立てるには、親御さんの財産状況を早めに確認しておく必要があります。年金や預貯金がどれくらいあるかで、使える施設やサービスの幅が変わります。
まずは、親御さんの通帳や年金額、加入している保険などを大まかに把握しておきましょう。認知症が進むとご本人が管理しづらくなるので、判断力があるうちの確認が肝心です。判断力が下がった後に備え、成年後見制度や家族信託を知っておくとよいでしょう。
お金の話は切り出しにくいものの、あいまいにするほどあとで困ります。帰省のタイミングなどで、少しずつ話題にしておくのがおすすめです。親御さんの資産を前提に費用を考えると、現実的な介護の計画を立てられます。
親の介護を任せられる施設の種類
自宅での介護が難しいときは、施設に親御さんの介護を任せる選択もあります。施設ごとに対象者や介護の手厚さが異なるため、親御さんの状態にあわせて適切な施設を選びましょう。
ここでは、介護を受けられる代表的な6つの施設を見ていきます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方が入所できる公的な施設です。食事・入浴・排せつなどの介護を受けながら、長期間にわたって暮らせます。
公的な施設のため費用を抑えやすく、所得に応じて居住費や食費を軽くする軽減制度も整っています。年金の範囲での入所を目指せる点が、大きな安心材料です。居室には複数人で使う多床室と、個室中心のユニット型があり、料金や暮らしやすさが変わります。
ただし、人気が高く、地域によっては入所までに時間がかかります。在宅での介護が難しい方は、申し込みだけでも早めに済ませておくと安心です。複数の施設に申し込んでおくと、待ち時間を短くできる場合があります。
関連記事:特別養護老人ホーム(特養)とは?種類・費用・入居条件から選び方のポイント、他の介護施設との違いまで徹底解説
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、リハビリを受けながら在宅復帰を目指す公的な施設です。病院と自宅の中間的な役割をもち、退院後に体力や生活機能を取り戻したい方が利用します。
医師や看護師、リハビリの専門職が配置され、医療的なケアにも対応できます。月額費用は9~20万円ほどが目安です。多床室か個室か、所得に応じた自己負担割合によって幅が出ます。原則として3~6か月の入所を前提とした施設です。
長く暮らす住まいというより、在宅復帰までの一時的な受け皿という位置づけです。特別養護老人ホームの空きを待つ間に利用されるケースもあります。入所には要介護1以上の認定が必要で、定期的に在宅復帰の見込みが検討されます。
関連記事:老健(介護老人保健施設)の費用はいくら?自己負担額や軽減制度を徹底解説
介護医療院
介護医療院は、医療と介護の両方を長く受けられる施設です。たんの吸引や点滴の管理など、日常的に医療的なケアが必要な方の受け皿として設けられました。
医師や看護師が配置され、長期の療養と介護を一つの場所で受けられます。在宅での介護が難しくなった、医療依存度の高い方に適した施設です。看取りに対応する施設もあります。
入居できるのは、医療の必要度などの条件を満たす方です。特別養護老人ホームでは受け入れが難しい、たんの吸引や経管栄養が続く方の住まいとしても選ばれます。医療と生活の場を一つにまとめたい場合は、主治医に相談しながら候補に加えてみましょう。
関連記事:介護医療院とは?入居条件から費用、他の介護施設との違いまで徹底解説
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、24時間の体制で介護を受けられる民間の施設です。食事や入浴、排せつの介助から生活支援まで一通りそろい、看取りに対応する施設もあります。
公的な施設より入居までの待ち時間が短い傾向があり、急いで住まいを移したいときの候補になります。要介護度が上がっても住み替えずに暮らせるのも、大きな魅力です。
費用は施設によって幅が大きく、入居一時金が必要な施設もあれば、月額のみで入れる施設もあります。レクリエーションや設備が充実した施設も多く、暮らしの快適さで選べる幅が広い点も特徴です。手厚い介護をすぐに受けたい場合は、見学して比べてみましょう。
関連記事:特定施設とは?介護付き・住宅型有料老人ホームとの違いから入居のポイントまで徹底解説
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認と生活相談がついたバリアフリーの賃貸住宅です。自宅に近い感覚で、自由度の高い暮らしを続けられる点が特徴です。
一般型と介護型があり、一般型は外部の訪問介護などを組み合わせ、介護型は施設のスタッフから手厚い介護を受けられます。親御さんの介護度にあわせて住まいを選べます。
費用は家賃や管理費、サービス費が月額の中心で、施設ごとの差が大きい部分です。介護度が重くなると住み替えが必要になる施設もあり、将来の対応範囲も確認しておくと安心です。自宅に近い住み替え先を探している場合は、候補に入れてみましょう。
関連記事:【徹底解説】サ高住の種類は2つ!一般型と介護型の違いや費用・選び方
グループホーム
グループホームは、認知症のある方が少人数で共同生活を送る地域密着型の施設です。5~9人のユニットで、なじみのスタッフから介護を受けながら暮らします。
料理や掃除など、暮らしの中の役割を保てるため、認知症の進行をゆるやかにしたい方に適しています。家庭に近い環境で穏やかに過ごせる点も特徴です。
ただし、医師や看護師の常駐は義務ではなく、日常的に医療が必要な方は入居が難しい場合があります。地域密着型のため、原則として施設のある自治体に住民票がある方が対象です。
少人数で顔なじみの関係を築けるため、環境の変化に敏感な方にも向いています。認知症が主な悩みで医療の必要性が低いなら、候補の一つになるでしょう。
関連記事:グループホームとは?認知症の方の安心な暮らしを支える仕組みや費用、選び方を徹底解説
立場によって変わる介護義務

介護の義務は、実の親か義理の親か、同居か別居かといった立場によって重さが変わります。
ここでは、立場ごとに変わる介護義務の考え方を見ていきます。
義理の親に生じる義務の範囲
配偶者の親、いわゆる義理の親を介護する法的義務は、原則としてありません。民法が扶養義務を定めるのは直系血族と兄弟姉妹に限られ、姻族である義理の親は原則その対象外です。
つまり、嫁や婿が義理の親を介護する義務は、法律上は課されていません。ただし、特別の事情があるときは、家庭裁判所が義理の親への扶養義務を負わせる場合もあります。その場合も、同居や経済的な結びつきなど、特定の事情があるときに限られます。
また、介護休業制度では配偶者の父母も対象家族に含まれますが、これは休業を取れる範囲の話で、扶養義務とは別です。義理の親の介護は義務ではなく、ご家族の協力として無理のない範囲で関わりましょう。
別居している親への義務
親御さんと離れて暮らしていても、扶養義務そのものは変わりません。民法の扶養義務に同居の条件はなく、別居していても直系血族としての義務は残ります。
ただし、別居の場合は自ら身体介護をするのが難しく、支援は金銭的な援助やサービスの手配が中心です。離れて暮らす親御さんに生活費を仕送りすれば、扶養義務は果たせます。帰省の頻度や交通費も、きょうだいで分担しておくと負担が偏りません。
別居していても、地域包括支援センターやケアマネジャーと連携すれば、遠くから親御さんの生活を支えられます。まずは親御さんの住む地域の窓口を調べ、相談先を確保しておきましょう。
一人っ子が抱えやすい負担
一人っ子の場合、分担できるきょうだいがいないぶん、負担が一人に集中しやすくなります。相談相手や役割を分け合う相手がいない心細さを感じる方も多いものです。
だからこそ、家族以外の支えを早めに確保する必要があります。地域包括支援センターや介護サービスなどの外部の力を借りれば、一人で抱え込まずにすみます。同じ立場の人が集まる家族会に参加すると、気持ちの面でも支えになるでしょう。
一人っ子だからすべてを背負う必要はありません。ご自身の生活と両立できるやり方を、遠慮なく専門職に相談してみましょう。
親の介護の義務でよくある質問
最後に、親御さんの介護の義務についてご家族から寄せられる疑問をまとめます。細かな点は専門家への相談が基本です。よくある質問を先に押さえておくと、動きやすくなるでしょう。
ここでは、特に相談の多い3つにお答えします。
介護した分を相続で多くもらえる?
親御さんの介護を担っても、その分の遺産を当然に多くもらえるわけではありません。ただし「寄与分」という制度があり、認められれば貢献分を遺産から先に受け取れる場合があります。
寄与分が認められるには、通常の扶養を超える特別な貢献や、無報酬での介護といった条件を満たす必要があります。同居して日常の世話をした程度では、認められにくいのが実情です。
トラブルを防ぐには、生前から遺言などで意思を残してもらうのが有効です。介護の負担と相続のバランスが気になるときは、早めに家族で話し合っておきましょう。
関連記事:親の介護をしたら遺産は多くもらえる?相続の「寄与分」とトラブル回避のための生前対策を解説
親と縁を切れば義務はなくなる?
法律上、親子の縁を切ることはできません。勘当や絶縁を宣言しても、戸籍のうえで親子関係は残り、扶養義務や相続の権利義務もなくならないのが原則です。
事実上、連絡を絶って疎遠になれますが、それでも法的な扶養義務は消えません。親御さんが生活に困窮すれば、扶養を求められる可能性は残ります。ただし、求められても支払えない事情があれば、無理に負担する必要はありません。
扶養義務は、あくまで余力の範囲での支えです。関係が悪く関わりたくない場合は、公的な窓口に事情を伝え、直接の関わりを最小限にする方法を考えましょう。
親にお金がないときは生活保護?
親御さん自身に資産や収入がなく、子も余力の範囲で支えきれない場合は、親御さんが生活保護を受けられる可能性があります。子が扶養できない状況は、生活保護を受ける妨げにはなりません。
生活保護を受けると、介護サービスの自己負担は介護扶助でまかなわれ、実質的な負担なくサービスを利用できます。家賃も住宅扶助で補われます。
まずは親御さんの資産や収入を確認し、支えきれないときは自治体の福祉窓口に相談しましょう。子がすべてを抱え込まなくても、公的なセーフティーネットで親御さんの生活は守れます。
関連記事:生活保護受給者の介護保険料は支払いが必要?免除の可否と介護扶助のしくみを解説
まとめ
親御さんの介護には子の扶養義務がありますが、それは経済的な支援が中心で、自ら手を動かして介護する法的義務はありません。生活扶助義務として、ご自身の生活を保ったうえで余力の範囲で支えれば、義務は果たせます。
ただし、助けが必要な親御さんを放置すると、保護責任者遺棄罪に問われる場合があります。介護を引き受けたくないときも、サービスや施設、公的な窓口を頼りながら、放置だけは避けるようにしましょう。
まずは親御さんの資産や使える制度を確認し、きょうだいや専門職と分担しながら、負担の少ない体制を整えていきましょう。親御さんの介護の義務や施設選びで迷ったときは『笑がおで介護紹介センター』へご相談ください。
参考サイト
- 扶養請求調停|裁判所
- 懲役・禁錮の拘禁刑への一本化|参議院法制局
- 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|生命保険文化センター
- 公的介護保険で自己負担額が高額になった場合の軽減措置とは?|生命保険文化センター
- 介護休業|厚生労働省
- サービスにかかる利用料|介護事業所・生活関連情報検索(厚生労働省)
- No.1125医療費控除の対象となる介護保険サービスの利用者負担額|国税庁
- 特別養護老人ホーム|健康長寿ネット
- 介護医療院について|厚生労働省
- 特定施設入居者生活介護|健康長寿ネット
- サービス付き高齢者向け住宅|健康長寿ネット
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)|健康長寿ネット
- 生活保護制度|厚生労働省

このコラムの監修者
花尾 奏一(はなお そういち)
保有資格:介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
有料老人ホームにて介護主任を10年
イキイキ介護スクールに異動し講師業を6年
介護福祉士実務者研修・介護職員初任者研修の講師
社内介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成・試験官を実施
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